祝詞

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祝詞とは

最終更新
2009-02-11T16:06:04+09:00
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祝詞とは、「のりと」と読み、神道において神徳を称え、崇敬の意を表する内容を神に奏上し、加護や利益を得んとする詞や文章のことである。通常は、神職によって独自の節まわしによる朗誦が行われ、文体・措辞・書式などに固有の特徴を持つ。今日の神社祭祀における祝詞は、神人合一の最高潮の場において「語る儀礼」として、奉仕者である神職が祭神に祭祀の意義と目的を奏上する文章であるが、古くは祭祀の場に参集した人々に対して宣り下された神語でもあった。語源は、「のりとごと(宣之言・宣処言・宣呪言・詔之言)」とする説が有力で、「のり」は「宣言する」や「言う」を意味する動詞「宣る(のる)」の名詞形、「と」は「もの」や「所」あるいは「呪言」の意味と考えられている。尚、賀茂真淵は『延喜式祝詞考』で「詔賜言(のりたべごと)」、本居宣長は『古事記伝』で「詔説言(のりときごと)」が、それぞれ語源ではないかとしている。

祝詞は、古代に行われた原始的な祈祷の詞から発したものであり、その中には呪術を含んだものもあった。日本には古くから、言語に神秘的または霊的な働きがあるとする言霊信仰があり、祝福の言辞を述べれば幸福が訪れ、呪詛の言辞を述べれば災禍に見まわれると信じられていた。古くは『古事記』や『日本書紀』、『万葉集』にも「のりと(ごと)」の用字例が見られ、『古事記』では「布刀詔刀言」、『日本書紀』では「太諄辞」や「祝詞」、『万葉集』では「敷刀能里等」などと記載されている。また平安時代以降の用例として、略語の「のと」や「のとごと」、音便の「のっと」が見られる。

祝詞の表記は、基本的には宣命書といわれる国文体の表記である。体言や用言などの自立語を大きく記し、助詞助動詞、活用語尾などを万葉仮名で一字一音式に右に寄せるか、二行に割り書きにして小さく記す表記が採られる。神語を主体とした祝詞の古形を考えるならば、宣読される祝詞の内容は神語そのものであり、誤読は決して許されるものではなく、そのため祝詞を読み易くかつ読み誤らぬようにするための文書表記法として成立したものが宣命書といわれている。古代の人々の間では、ある言語を発するとその言葉に含まれる霊力の作用によって、その言葉の内容どおりの状態が実現されると考えられていた。したがって、祝詞を読み誤った場合には、誤ったままの状態が実現すると信じられたのである。

神社の祭祀の執行については、古来より様々な伝承があるが、祭祀儀礼を示すものとして「神祗令」第一条には、凡天神地祗は、神祗官皆常典に依りて祭れ、と規定されており、神祗官の最も大切な職務として、年中の祭典を定められた通りに遺漏なく執行することが求められている。また、「延喜大神宮式」に、凡祭に供ずる物、式条に載せざるは、旧によりて供用し、前例を改むること勿れ、とあり、祭祀は前例を改めず、従来なされていたままの形を踏襲すべきとしている。さらに、「延喜式祝詞」では、凡四時の諸祭に祝詞を云はざるは、神部皆常の例に依りて宣れ、其の臨時の祭の祝詞は、所司事に随ひて祭に前ち脩撰し、官に進りて処分を経て、然る後に行へ、とし、祝詞に関しても前例の容易な変更が許されていないことが示されている。これから、新しい祝詞の作成及び奏上については太政官の許可を経ねばならず、伝承された祝詞以外の勝手な作成や奏上は許されていなかったことが伺われる。

祝詞には、祭場に参集した人々に対して宣り聞かせる文末が「宣る(宣たまふ)」で終る形式の宣命体(宣下体)と、神々に対して申し上げる文末が「白す(申す)」で終る形式の奏上体とがある。祝詞の「のり」には「宣り聞かす」との意味が考えられることから、宣命体の祝詞が祝詞の本義を伝えるものであると考えることもできるが、奏上体の祝詞の中にも古い内容形式を留めているものがあり、どちらが発生的により古いかは断定し難い。ただし、一般的には奏上体よりも宣命体の祝詞の方に古いものが多くみられている。また、折口信夫は古代祝詞の用例から、高位にあるものが下位にあるものへ祝福を授けるための言葉が宣命体であり、その礼として下位にあるものが高位にあるものを称え服従を誓う言葉が奏上体であるとの説を表している。更に、延喜式祝詞収載の祝詞をみると、宣命体の祝詞はどちらかといえば朝廷における公的な性格を有する祭祀の祝詞が多いのに対し、奏上体の祝詞は天皇の私的な性格を有する祭祀の祝詞にその事例が多いといわれている。

その目的によって、今日一般に祝詞と呼ばれるものには様々な種類があり、現在でも大和言葉が用いられている。祝詞を大別すると、およそ次のように分類できる。

延喜式祝詞

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2009-04-26T10:30:20+09:00
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延喜式祝詞とは、『延喜式』の第八巻に収載された二十七編からなる祝詞を指す。『延喜式』は、醍醐天皇の延喜5(905)年8月に、左大臣藤原時平等が、天皇の詔を奉じて編纂を開始、未完のまま時平がこの世を去ったため、天皇は同十二(912)年2月に弟の大納言藤原忠平等に詔してその編纂を促し、延長5(927)年12月26日に完成奏進された、全五十巻からなる法令である。『延喜式』五十巻のうち最初の十巻が神祗式で、その巻八が「祝詞式」であり、当時の主要な恒例・臨時の官祭や儀式の祝詞が記載されている。これは、平安時代の弘仁年間(810〜824年)に、それ以前から宮廷に伝誦されてきた祝詞がまとめられたものとされる。これは、それぞれの祭祀の由来や祭神に関する神話や神徳などが語られており、明治8年4月に式部寮から祝詞例文が示されるまでの間は、わが国唯一の公的祝詞例文でもあった。

このほか、藤原頼長の日記である『台記』の別記などに含まれる「中臣寿詞」や、『延喜式』に記されている「儺祭詞(儺祭祭文)」も上代における公的な祝詞の記録であり、それら二十九編が今日においても祝詞の典拠として特に重要視されている。

尚、延喜式祝詞の巻頭には、以下の諸条を記載し、その後に続けて二十七編の祝詞本文が記載されている。

祝詞

凡祭祀祝詞者、御殿・御門等祭、齋部氏祝詞、以外諸祭、中臣氏祝詞、
凡四時諸祭、不云祝詞者、神部皆依常例宣之、
其臨時祭祝詞、所司随事修撰前祭、進官経処分、然後行之、

およ祭祀さいし祝詞のりとは、 御殿おほとの御門みかどなどまつりには、 齋部いみべうじ祝詞のりとまをせ、 以外ほかもろもろまつりには、 中臣なかとみうじ祝詞のりとまをせ、
およ四時しいじもろもろまつりに、 祝詞のりとはざるは、 神部かむべ皆常みなつねためしりてれ、
臨時りんじまつり祝詞のりとは、 所司しょしことしたがひてまつりさきだ修撰しうせんし、 くわんたてまつりて処分しょぶんて、 しかのちおこなへ、

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Copyright (C) 2009 七鍵 key@do.ai 初版:2009年02月11日 最終更新:2009年04月26日