デモクリトス【Demokritos】
デモクリトス(BC460年頃〜BC370年頃)
- 最終更新
- 2007-10-14T13:14:08+09:00
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古代ギリシャの哲学者。ギリシャ北方のアルデラ(Abdera)の生まれ。多元論者の考え方では、アルケーの他に運動の原因となる何かを想定せざるを得なかった。そこで、存在か無かとのそれまでの発想に対して、充実(プレーレス:pleres)しているか空虚(knon:ケノン)であるかとの観点を導入し、空虚という状態も1つの「あり方」だと考える人々が登場し始めた。これらの人を「原子論者」と呼ぶ。デモクリトスは、師であったレウキッポスとともに古代原子論の祖といわれ、原子論者の代表とされる。倫理学、物理学、心理学、数学、天文学、詩学、生物学などの様々な分野の研究を重ね、ついに宇宙の成立を原子で説明するに至った。
デモクリトスは空間を背景として、充実した物体としての「アトム【atom】(不可分なもの)」がその中を自由に運動していると考え、このアトムを万物の究極の構成単位とみなした。この世界には知覚し得ないほど微小で、不生・不滅・無性質・分割不可能なアトムが無数に存在し、上下のない空虚の中で、形や大きさ、配列、姿勢の違うアトムの結合や分離によって、通常我々の感覚でとらえられる生成消滅などあらゆる現象が生じる。アナクサゴラスの唱えたスペルマタとの違いは、スペルマタは違う種類のものがたくさんありその割合や量の差で物質の特性が決まるとしていたのに対し、アトムは全て同じ性質だが大きさや形は様々でその位置や配列の違いで物質の特性が決まるとした点である。こう考えることによって、物質の構成は空虚な空間の中を自由に運動する無数のアトムのその都度の配置と結合と説明され、他から運動原因を持ち込む必要がなくなったのである。
レウキッポス
レウキッポス(Leukippos:B.C.480〜)(レウキャボスとも)はミレトスに生まれ、エレアでゼノンに師事。レウキッポスはパルメニデスから大きな影響を受けたとされ、その説はパルメニデスの提出した問題に答えようとして深められた。レウキッポスは空虚の存在を認め、ゼノンをはじめとするエレア派の立場を否定した。ただし、レウキッポスが確かに生存したとの資料はなく、レウキッポスの存在自体が架空の作り話だという人もいる。このため、原子論の業績はほぼ全て弟子であるデモクリトスのものとなっている。
デモクリトスの残した名言
- 魅力ある老人とは、甘美に誘いまた重々しく語ることのできる人である。
- 反駁を好み多くの言を費やす者は、いかなる正しいことも学ぶ能力がない。
- 多くを知りながら、少しも足りてない。彼らには、知識はあっても、知恵がない。
- 多くの愚者を友とするより、一人の知者を友とするべきである。
- 祝祭のない生活とは、旅館のない、長い街道である。
- 子育ては失敗しやすい。それは成功した場合も争いと心配が尽きないし、失敗すれば他の失敗とは比べられないほど悲劇だ(断片275)。
- 子どもを持つことは、本能によって、また昔からの慣わしで当然だと考えられている。これは他の生物を見ても明らかだ。本能に基づいて子どもをもうけるのであって、何か利益を目当てにして子どもを持つのではない。子供が生まれてしまうと、親は苦労して働き、全力で子供たちを養育する。子供たちが幼いうちは特に注意し、彼らにもしものことがあれば本人以上に心を痛める。このような性質は、命あるすべてのものが持っている。だが人間たちは、子供たちから何らかの利益を得られるというような考え方を持つようになってしまった(断片278)。
- 賢者には大地は至る所に開かれている。善良なる魂の祖国は全世界なり。
- いかなることも、偶然には起こり得ない。
その他
- 原子論を中心とするデモクリトスの学説は、古代ギリシャにおける唯物論の完成であると同時に、後代のエピクロスや近世の物理学に決定的な影響を与えた。
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- その博識のために「知恵【Sophia】」と称された。また、その快活な気性のため「笑う人【Gelasinos】」とも称されたとされる。ただし、人々の愚かな行為を見て嘲り笑っていただけとの説もある。
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- アナクサゴラスの弟子でもあり、ペルシャの僧侶やエジプトの神官に学び、エチオピアやインドにも旅行したとの言い伝えがある。
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- 財産を使い果たして故郷の兄弟に扶養されたが、その著作の公開朗読により国費で葬られたという。また非常に長寿で、100歳まで生きたと伝えられている。
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- デモクリトスは世界の起源については語らなかったが、「いかなることも偶然によって起こりえない」と明確に述べている。そこにはエンペドクレスの「愛と憎しみ」やアナクサゴラスのヌースが入り込む余地はない。
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- 倫理学においては、政治の騒がしさや神々への恐怖から解放された魂の安らかさが理想の境地とされ、詩学においては霊感の力が説かれている。
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- この世界は全てアトムで構成されているのだから、死ぬとはその人間を構成しているアトムがバラバラになることであり死後の世界などない、と唯物的世界観をはっきりと述べていた。また、アトムの運動は確実な法則によって成り立つため世界の全ての現象は必然であると考え、人間に自由意志はないとの「機械的世界観」をも述べている。
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- プラトンやアリストテレスに偶然的で機械的な世界観と否定され、再び原子論が見直されて更なる発展を遂げたのは近代に入ってからのこととなる。
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- 関心の範囲が広く、デモクリトスの著作の数はおびただしいものにのぼったとされる。ディオゲネス・ラエルティオスはデモクリトスの膨大な著作を、倫理学、自然学、数学、文芸の4部門に分けて分類列挙。ただし、現在にはほとんどその著作は伝わっておらず、プラトンが手に入る限りのデモクリトスの著作を集め、全て焼却したとの伝説もある。別の説では、プラトンはデモクリトスの著作が燃えてなくなることを願っただけとも言われている。
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