エンペドクレス【Empedokles】
エンペドクレス(BC493年頃〜BC433年頃)
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- 2007-09-30T17:00:51+09:00
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古代ギリシャの自然哲学者で、哲学者であるとともに医師、詩人、神学者であり、民主政治を導いた政治家でもあった人物。火・空気・水・土の4元素が結合したり分離したりすることで、様々な世界が出来上がっているとの学説を唱え、パルメニデスとヘラクレイトスの相反する考え方を融合させた。
パルメニデスの議論を踏まえつつ、感覚世界の多様化と変化をも説明しようと試みたのが多元論者と呼ばれる人々であり、その代表者の1人がエンペドクレスとされる。エンペドクレスはピタゴラス学派に学び、パルメニデスの教えを受けた。彼は、世界には複数のアルケーがあり、それらの様々な結合と分離によって万物が生成されるとの説明方式を思いついた。こう考えればアルケー自体は生成も消滅もしないわけであり、パルメニデスの思想とも両立が可能となる。
エンペドクレスによれば、我々の認識できる最も基本的で恒常的な存在は、火(太陽)・空気(天空)・水(海洋)・土(大地)の4つのリゾーマタ(rizomata:根)で、リゾーマタが様々な方法で結合と分離をすることで、この多様な世界ができあがっているというわけである。リゾーマタの内、「土」が多く配合されたものが大地、「水」が多く配合されたものが「海」、「風」が多く配合されたものが「空」など、それぞれの配分比率であらゆるものが生成されていると考えたのである。また、リゾーマタが全て等しく配合されると「血液」になるとも説いた。これはちょうど、画家が限られた絵の具で様々な色彩の森羅万象を描き出すのと同じことである。さらにエンペドクレスは、この結合と分離を司る法則として、愛(ピリア【φιλια:philia】)と争い(ネイコス【neikos】)との2つの力を想定した。ここで言う「愛」とは引力であり、「争い」とは斥力である。リゾーマタは新たに生まれることや消滅することはなく、宇宙は愛の支配と争いの支配とが継起交替する動的反復の場であると考えたのである。
またエンペドクレスは、世界に現在ある多様な生物は4元素によって出現したが、この法則がどのように働いてどのような生物が生み出されるかは偶発的としか言いようがないとした。つまり、かつては首のない頭や2つの顔を持った人間、肩のない腕を持った人間などが生まれていたとしても不思議はなく、それらの中で生存に適したものだけが生き残り、今日あるような生物の姿になったと考えた。これは現代の進化論を先取りした発想である。
その他
- 弁論術の祖とされる。
- 名家の出身で、エンペドクレスの祖父は紀元前496年に行われた競馬のオリンピア競技で優勝したといわれ、彼自身も優勝したことがあるとされる。
- 金冠を頭に戴き、紫色の衣に金のベルトを巻いて、デルポイの花冠を携えて、諸都市を巡り歩いたと伝えられている。
- 誇大妄想狂的な一面ももっていたようで、最期は神と一体化するために火山に身を投げて自殺を図ったと伝えられている。事実の程は判らないが、靴を揃えて飛び降り自殺を遂げた人類史上初の人物としても名を残している。
- 両端に穴の開いている円筒を縦にして水の中に入れると、そのままでは円筒の中に水が入るが、円筒の上側を手で塞ぐと水が入ってこないとの実験から、空気は物体であると証明したと言われている。
- エンペドクレスは月の光が反射光だと見破っていたとされるが、太陽の光も反射光だと考えていたようである。
- 太陽は巨大な火の塊であり、月よりも大きいと考え、天は氷のように冷たいものが集まってできており、星々は火のリゾーマタが集まってできているとした。
- 魂は頭や胸ではなく、血液に宿っていると考えた。魂の転生説を支持し、「私はかつて一度は少年であり、少女であり、藪であり、鳥であり、海ではねる魚であった」と語ったという。また、最初の人間は土から頭や腕や足などの体の一部ができ、それらが寄り集まって生まれたとも説いた。
- 感覚についても考察をしており、視覚は目から光が放出されて対象物に当ることによって生じ、聴覚は耳の中にある軟骨質の鐘のような部分が空気によって打たれることにより生じるとした。
- 宇宙は「愛が完全支配する時期」、「争いが侵入する時期」、「争いが完全支配する時期」、「愛が侵入する時期」の4時期を永遠に繰り返すとも考えた。
- エレア派の主張からか、4つのリゾーマタは元々完全な1つの球体であったとも説いている。
- 磁力の起源についても考察している。
- 強風がアクラガスの町を襲った際、エンペドクレスは人々にロバの皮でたくさんの革袋を作らせたという。それを周囲の山の尾根に張り巡らせて風を鎮めたため、「風を封じる人」と称された。
- エンペドクレスが執政官の1人から食事に招かれたとき、賓客の中に評議会の監督官がいたという。その男は座長に指名されると、他の賓客達に酒を飲み干すか頭にそそぎかけることを強要した。その振る舞いを見たエンペドクレスは、翌日その男を法廷に告発し、有罪とさせたとの逸話が残っている。
- セリヌゥス町の住人が、付近を流れる汚染された川から広がった疫病に苦しんでいた。それを聞いたエンペドクレスは私財をなげ売って土木工事を行い、別の川の流れを汚染された川に引き込み、中和させて疫病を鎮めたといわれている。
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Copyright (C) 2007 七鍵 key@do.ai 初版:2007年10月05日 最終更新:2007年10月05日