小倉百人一首

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小倉百人一首

最終更新
2005-12-28T00:04:00+09:00
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歴史的仮名遣い読み
作者勅撰和歌集掛詞・枕詞
1秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ
天智天皇(中大兄皇子)後撰集かりほ=仮庵・刈り穂
2春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま
持統天皇新古今集-
3あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
あしびきの やまどりのをの しだりをの ながながしよを ひとりかもねむ
柿本人麻呂拾遺集あしびきの→山
4田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ
たごのうらに うちいでてみれば しろたへの ふじのたかねに ゆきはふりつつ
山部赤人新古今集-
5奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき
おくやまに もみぢふみわけ なくしかの こえきくときぞ あきはかなしき
猿丸大夫古今集-
6かささぎの 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける
かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける
中納言家持(大伴家持)新古今集-
7天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも
安倍仲麿(安倍仲麻呂/阿部仲麻呂)古今集-
8わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり
わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢやまと ひとはいふなり
喜撰法師古今集うぢ=憂し・宇治
9花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせし間に
はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに
小野小町古今集ふる=降る・経る/ながめ=長雨・眺め
10これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも あふ坂の関
これやこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき
蝉丸後撰集あふ=逢ふ・逢(坂)
11わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ あまのつり舟
わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね
参議篁(小野篁)古今集-
12天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ
あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ
僧正遍昭(照)古今集-
13筑波嶺の みねより落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる
つくばねの みねよりおつる みなのがは こひぞつもりて ふちとなりぬる
陽成院後撰集-
14陸奥の しのぶ もぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに
みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれそめにし われならなくに
河原左大臣(源融)古今集そめ=染め・初め
15君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ
きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ
光孝天皇古今集-
16立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む
たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ
中納言行平(在原行平)古今集いなば=往なば・稲羽(因幡)/まつ=松・待つ
17ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
ちはやぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは
在原業平朝臣古今集ちはやぶる→神
18住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ
すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ
藤原敏行朝臣古今集よる=寄る・夜
19難波潟 短き蘆の ふしの間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや
なにはがた みじかきあしの ふしのまも あはでこのよを すぐしてよとや
伊勢新古今集ふしのま=節と節の間・短い時間/よ=節・世の中・男女の仲
20わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ
わびぬれば いまはたおなじ なにはなる みをつくしても あはむとぞおもふ
元良親王後撰集みをつくし=澪標・身を尽くし
21今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな
いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな
素性法師古今集-
22吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ
ふくからに あきのくさきの しをるれば むべやまかぜを あらしといふらむ
文屋康秀古今集あらし=嵐・荒らし
23月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど
大江千里古今集-
24このたびは 幣も取りあへず 手向山 紅葉 の錦神のまにまに
このたびは ぬさもとりあへず たむけやま もみぢのにしき かみのまにまに
菅家(菅原道真)古今集たび=旅・度/手向=手向(山)・手向け
25名にし負はば あふ坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな
なにしおはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな
三条右大臣(藤原定方)後撰集あふ=逢ふ・逢(坂)/さね=さ寝・さね(かずら)/くる=来る・繰る
26小倉山 みねのもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ
おぐらやま みねのもみぢば こころあらば いまひとたびの みゆきまたなむ
貞信公(藤原忠平)拾遺集-
27みかの原 わきて流るる いづみ川 いつみきとてか 恋しかるらむ
みかのはら わきてながるる いづみがは いつみきとてか こひしかるらむ
中納言兼輔(藤原兼輔)新古今集わきて=分きて・湧きて/いづみ=泉(川)・出水
28山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば
やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもへば
源宗于朝臣古今集かれ=離れ・枯れ
29心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
こころあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな
凡河内躬恒古今集-
30有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし
ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし
壬生忠岑古今集-
31朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき
坂上是則古今集-
32山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり
やまがはに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり
春道列樹古今集-
33ひさかたの 光のどけき 春の日に しづこころなく 花の散るらむ
ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづこころなく はなのちるらむ
紀友則古今集ひさかたの→光
34誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
たれをかも しるひとにせむ たかさごの まつもむかしの ともならなくに
藤原興風古今集-
35人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける
ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける
紀貫之古今集-
36夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ
なつのよは まだよひながら あけぬるを くものいづこに つきやどるらむ
清原深養父古今集-
37白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける
文屋朝康古今集-
38忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな
わすらるる みをばおもはず ちかひてし ひとのいのちの をしくもあるかな
右近拾遺集-
39浅茅生の 小野の篠原 忍ぶれど あまりてなどか 人の恋しき
あさぢふの をののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこひしき
参議等(源等)後撰集浅茅生の→小野
40忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで
しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで
平兼盛拾遺集-
41恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
こひすてふ わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもひそめしか
壬生忠見拾遺集-
42契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは
ちぎりきな かなみにそでを しぼりつつ すゑのまつやま なみこさじとは
清原元輔後拾遺集-
43逢ひ見ての 後の心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり
あひみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもはざりけり
権中納言敦忠拾遺集-
44逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし
あふことの たえてしなくは なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし
中納言朝忠(藤原朝忠)拾遺集-
45あはれとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな
あはれとも いふべきひとは おもほえで みのいたづらに なりぬべきかな
謙徳公(藤原伊尹)拾遺集-
46由良の門を 渡る舟人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かな
ゆらのとを わたるふなびと かぢをたえ ゆくへもしらぬ こひのみちかな
曽禰好忠新古今集-
47八重葎 しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり
やへむぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり
恵慶法師拾遺集-
48風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ 砕けて物を 思ふころかな
かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ くだけてものを おもふころかな
源重之詞花集-
49御垣守 衛士の焚く火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ
みかきもり ゑじのたくひの よるはもえ ひるはきえつつ ものをこそおもへ
大中臣能宣朝臣詞花集-
50君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな
藤原義孝後拾遺集-
51かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを
かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひを
藤原実方朝臣後拾遺集いぶ(き)=言ふ・伊吹/ひ=(思)ひ・火
52明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな
あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな
藤原道信朝臣後拾遺集-
53嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る
なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる
右大将道綱母拾遺集-
54忘れじの 行く末までは かたければ けふを限りの 命ともがな
わすれじの ゆくすゑまでは かたければ けふをかぎりの いのちともがな
儀同三司母新古今集-
55滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ
たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なほきこえけれ
大納言公任(藤原公任)拾遺集-
56あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの 逢ふこともがな
あらざらむ このよのほかの おもひでに いまひとたびの あふこともがな
和泉式部後拾遺集-
57めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな
めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よはのつきかな
紫式部新古今集-
58有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
ありまやま ゐなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする
大弐三位(藤原賢子)後拾遺集-
59やすらはで 寝なましものを 小夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな
やすらはで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな
赤染衛門後拾遺集-
60大江山 いくのの道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立
おほえやま いくののみちの とほければ まだふみもみす あまのはしだて
小式部内侍金葉集いく(の)=生野・行く/ふみ=踏み・文
61いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな
いにしへの ならのみやこの やへざくら けふここのへに にほひぬるかな
伊勢大輔詞花集けふ=今日・京/ここのへ=宮中・この辺
62夜をこめて 鶏の空音は はかるとも よにあふ坂の 関はゆるさじ
よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふさかの せきはゆるさじ
清少納言後拾遺集あふ=逢ふ・逢(坂)
63今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな
いまはただ おもひたえなむ とばかりを ひとづてならで いふよしもがな
左京大夫道雅(藤原道雅)後拾遺集-
64朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木
あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに あらはれわたる せぜのあじろぎ
権中納言定頼(藤原定頼)千載集-
65恨みわび 乾さぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
うらみわび ほさぬそでだに あるものを こひにくちなむ なこそをしけれ
相模後拾遺集-
66もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし
もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし
前大僧正行尊金葉集-
67春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かひなくたたむ なこそをしけれ
周防内侍千載集かひな(く)=腕・効な(く)/甲斐な(く)
68心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
こころにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな
三条院後拾遺集-
69あらし吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり
あらしふく みむろのやまの もみぢばは たつたのかはの にしきなりけり
能因法師後拾遺集-
70さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば いづこも同じ 秋の夕暮
さびしさに やどをたちいでて ながむれば いづこもおなじ あきのゆふぐれ
良暹法師後拾遺集-
71夕されば 門田の稲葉 おとづれて 蘆のまろやに 秋風ぞ吹く
ゆふされば かどたのいなば おとづれて あしのまろやに あきかぜぞふく
大納言経信金葉集-
72音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ
おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでの ぬれもこそすれ
祐子内親王家紀伊金葉集たかし=高師・高し/かけ=波を袖にかけ・思いをかけ
73高砂の 尾上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ
たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ
権中納言匡房(大江匡房)後拾遺集-
74憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを
うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はげしかれとは いのらぬものを
源俊頼朝臣千載集-
75契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり
ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あはれことしの あきもいぬめり
藤原基俊千載集-
76わたの原 漕ぎ出でて見れば ひさかたの 雲ゐにまがふ 沖つ白波
わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ
法性寺入道前関白太政大臣(藤原忠通)詞花集ひさかたの→雲
77瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
せをはやみ いはにせかるる たきがはの われてもすゑに あはむとぞおもふ
崇徳院詞花集われて=水が分かれて・二人が分かれて
78淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に いく夜ねざめぬ 須磨の関守
あはぢしま かよふちどりの なくこゑに いくよねざめぬ すまのせきもり
源兼昌古今集-
79秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ
あきかぜに たなびくくもの たえまより もれいづるつきの かげのさやけさ
左京大夫顕輔(藤原顕輔)新古今集-
80長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ
ながからむ こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもへ
待賢門院堀河千載集みだれて=黒髪が乱れて・心が乱れて
81ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる
ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる
後徳大寺左大臣(藤原実定)千載集-
82思ひわび さても命は あるものを 憂きに堪へぬは 涙なりけり
おもひわび さてもいのちは あるものを うきにたへぬは なみだなりけり
道因法師千載集-
83世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
よのなかよ みちこそなけれ おもひいる やまのおくにも しかぞなくなる
皇太后宮大夫俊成(藤原俊成)千載集入る=(思ひ)入る・(山に)入る
84ながらへば またこの頃や しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき
ながらへば またこのごろや しのばれむ うしとみしよぞ いまはこひしき
藤原清輔朝臣新古今集-
85夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり
よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり
俊恵法師千載集-
86嘆けとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな
なげけとて つきやはものを おもはする かこちがほなる わがなみだかな
西行法師千載集-
87村雨の 露もまだひぬ 槙の葉に 霧たちのぼる 秋の夕暮
むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆふぐれ
寂蓮法師新古今集-
88難波江の 蘆のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき
なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや こひわたるべき
皇嘉門院別当千載集かりね=刈り根・仮寝/ひとよ=一節・一夜/みをつくし=澪標・身を尽くし
89玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
たまのをよ たえなばたえね ながらへば しのぶることの よわりもぞする
式子内親王新古今集-
90見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色はかはらず
みせばやな をじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかはらず
殷富門院大輔千載集-
91きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む
きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ
後京極摂政前太政大臣(藤原良経)新古今集さむしろ=さ筵・寒し
92わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし
わがそでは しほひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし
二条院讃岐千載集-
93世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ あまの小舟の 綱手かなしも
よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのをぶねの つなでかなしも
鎌倉右大臣(源実朝)新勅撰集-
94み吉野の 山の秋風 小夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり
みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり
参議雅経(藤原雅経)新古今集-
95おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖
おほけなく うきよのたみに おほふかな わがたつそまに すみぞめのそで
前大僧正慈円千載集すみぞめ=住み初め・墨染めの衣
96花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり
はなさそふ あらしのにはの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり
入道前太政大臣(藤原公経)新勅撰集ふり=降り・古り(旧り)
97来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
こぬひとを まつほのうらの ゆふなぎに やくやもしほの みもこがれつつ
権中納言定家(藤原定家)新勅撰集まつ=待つ・松(帆の浦)/こがれ=こがれ・焦がれ
98風そよぐ ならの小川の 夕暮は みそぎぞ夏の しるしなりける
かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは みそぎぞなつの しるしなりける
従二位家隆(藤原家隆)新勅撰集なら=楢・奈良
99人もをし 人もうらめし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は
ひともをし ひともうらめし あぢきなく よをおもふゆゑに ものおもふみは
後鳥羽院続後撰集-
100ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり
ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なほあまりある むかしなりけり
順徳院続後撰集しのぶ=忍ぶ(草)・偲ぶ

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Copyright (C) 2005 七鍵 key@do.ai 初版:2005年12月28日 最終更新:2005年12月28日