教師の倫理綱領

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当倫理綱領は、教師の倫理綱領(昭和二十七年六月十八日)を基に再度考え直された綱領である。

教師の倫理綱領

まえがき

私たちの組合は、昭和二七年に「教師の基本綱領」を決定しました。決定されるまでの約一年間、全国の各職場では倫理綱領の草案をめぐって検討をつづけました。「自分たちの倫理綱領を、自分たちの討論のなかからつくろう」これが、私たちの考え方でした。

私たちが、綱領草案をめぐって話しあいを行なっていた昭和二六年という年は、全面講和か、単独講和か、これからの日本の歩む途をめぐって国論が二つにわかれてったかわされていた時期です。私たちは、敗戦という大きな代償を払って、やっと手中にした「民主主義と平和」を危機におとしいれる心配の濃い「単独講和」に反対してきました。平和憲法に対する理由のない攻撃も、この時からはじめられました。

このような時代を背景に、私たちの討論はつづけられました。そして「平和と民主主義を守りぬくために、今日の教師はいかにあるべきか」「望ましい教師の姿勢はどうあるべきか」、私たちの倫理綱領草案の討論には、以上のような考え方が基礎になっていました。ですから、これはたんなる「標語」ではなく、私たち自身の古さをのりこえ、新しい時代を見きわめて、真理を追究する者のきびしさ、正義を愛する熱情に支えられてた生きた倫理、民族のもつ課題に正しく応える倫理という考え方が、私たちの倫理綱領の基調になっています。つまり、歴代の文明などが理由のないいいがりなどつけても微動もしない倫理綱領であるということがいえます。

以下、私たちの倫理綱領各項についてかんたんにふれたいと思います。

一 教師は日本社会の課題にこたえて青少年とともに生きる。

平和を守り、民族の完全な独立をかちとり、憲法にしめされた民主的な社会をつくりだすことは教師に与えられた課題といえます。私たちは自ら深い反省にたち努力することによって、この課題に応えうる教師となるとともに、青少年がこの課題解決のための有能な働き手となるよう育成されなければならないことをしめしました。

二 教師は教育の機会均等のためにたたかう

青少年は各人のおかれた社会的、経済的条件によって教育を受ける機会を制限され、憲法の条項は空文に終っています。

とくに、勤労青年、障害児(盲・ろう・肢体不自由児など)の教育はすててかえりみられていません。教師は教育の機会均等の原則が守られるよう、社会的措置をとらせるよう努力しなければならないことをしめしました。

三 教師は平和を守る

平和は人類の理想であるとともに、日本の繁栄と民主主義も、平和なくしては達成できません。教師は人類愛の鼓吹者、生活改造の指導者、人権尊重の先達として生きいっさいの戦争挑発者と勇敢にたたかわなければならないことを明らかにしました。

四 教師は科学的真理に立って行動する

社会の進歩は、科学的真理にたってこそ達成されます。科学の無視は人間性の抑圧に通じます。教師は人間性を尊重し、自然と社会を科学的に探求し、青少年の成長のために合理的環境をつくりだすために、学者、専門家と協力しあうことをしめしました。

五 教師は教育の自由の侵害を許さない

教育研究、教育活動の自由はしばしば不当な力でおさえられています。言論、思想、学問、集会の自由は憲法で保障されていますが、実際には制限され、圧迫されています。

教育の自由の侵害は、青少年の学習の自由をさまたげるばかりではなく、自主的な活動をはばみ、民族の将来をあやまらせるものであります。

以上のことから、私たちが自由の侵害とあくまでもたたかうことをここで明らかにしました。

六 教師は正しい政治をもとめる

これまで教師は、政治的中立という美名で時の政治権力に一方的に奉仕させられてきました。戦後、私たちは団結して正しい政治のためにたたかってきました。

政治を全国民のねがいにこたえるものとするため、ひろく働く人とともに正しい政治をもとめて、今後もつよくたたかうことをしめしました。

七 教師は親たちとともに社会の頽廃とたたかい、新しい文化をつくる

あらゆる種類の頽廃が青少年をとりまいています。私たち教師は、マス・コミ等を通じて流される頽廃から青少年を守ると同時に、新しい健康的な文化をつくるために、親たちと力をあわせてすすむことをしめしました。

八 教師は労働者である

教師は学校を職場として働く労働者であります。

しかし、教育を一方的に支配しようとする人びとは、「上から押しつけた聖職者意識」を、再び教師のものにしようと、「労働者である」という私たちの宣言に、さまざまないいがかりをつけています。

私たちは、人類社会の進歩は働く人たちを中心とした力によってのみ可能であると考えています。私たちは自らが労働者であることの誇りをもって人類進歩の理想に生きることを明らかにしました。

九 教師は生活権を守る

私たちはこれまで、清貧にあまんずる教育者の名のもとに、最低限の生活を守ることすら口にすることをはばかってきましたが、正しい教育を行なうためには、生活が保証されていなくてはなりません。

労働に対する正当な報酬を要求することは、教師の権利であり、また義務であることをしめしました。

十 教師は団結する

教師の歴史的任務は、団結を通じてのみ達成することができます。教師の力は、組織と団結によって発揮され、組織と団結はたえず教師の活動に勇気と力をあたえています。

私たちは自らが団結を強め行動するとともに、国民のための教育を一部の権力による支配から守るため、世界の教師、すべての働く人びとと協力しあっていくことが、私たちの倫理であることを明らかにしました。

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Copyright (C) 2009 七鍵 key@do.ai 初版:2009年07月05日 最終更新:2009年08月30日